みんなの人気者・ダイゴローのブログ
文芸サークル百宴らいたぁの若きエースにして
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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 ざあざあと潮騒が響く中、二人の男が海辺に佇んでいた。 そこには穏やかな雰囲気はない。しかし、かといってアヤシイ雰囲気もない。これはそういう話ではない。 二人は視線を合わせることはなく、真剣なまなざしで海の彼方を眺めていた。 後ろにはもう一人男がおり、にやにやと馬鹿にするような笑みを浮かべて二人の様子を眺めていた。 話は数分前に遡る。 時はまだ肌寒い三月頭。場所は天橋立の途中の海岸である。 一行は大学のサークルの合宿で舞鶴へと来ていた。西舞鶴駅までバスで向かい、そこから北近畿タンゴ鉄道を乗り継いで天橋立に降り立った。 海沿いの海岸に佇んでいる男の片方は二回生で、もう一人は一回生の後輩である。 仮に二回生の方を黒メガネ、一回生の方を赤メガネと呼ぶ。双方メガネだが色が異なるので都合が良い。 その後ろに控えている男も一回生なのだが、彼の呼び名は必要ではない。ここで出番は終わりである。 一行は三人だけではなくもう一人五回生の先輩がいたが、天橋立を渡っている途中、残りの青春を走りきるかのように突然無言で一行の前から走り去った。もう訳が判らない。 残された三人がのんびりと彼を追いかけている途中に、赤メガネが黒メガネへと突然声をかけた。 ――先輩、どっちがチキンか、勝負しましょうよ。 不敵な笑みを浮かべる赤メガネに、黒メガネは二つ返事で答えた。 ――泣きを見んなよ。 そんな男前なことを言ってないような気もするが、少々の美化は許される気がする。 赤メガネが提示した勝負は単純明快。どちらがぎりぎりまで波打ち際に立っていられるかという勝負である。 先に離脱した方がチキン。別段罰ゲームなどはない。 ――しかし。 赤黒メガネは視線を交差させ、波打ち際へと歩いていく。 ――これは、男の勝負だ。 きっと、こんなことは考えていなかったのだが。 ◇ この勝負は度胸だけでなく、波を正確に読む力が必要とされる。 波の単純な大きさに惑わされてはならない。勿論これは必要不可欠な情報なのだが、それだけでは判断を誤る。 波が発生し、自分の数メートル手前で一瞬停滞し、その後にどれだけ伸びてくるか。これを読まねばならない。 この「伸び」を見誤ったとき、勝負は決する。 まだ大きな波は発生していない。数回互いを牽制しつつ、勝負は進んでいった。 そして、数回目の波が起こったときのことである。 一見、普通の波であった。 しかし、数メートル手前で停滞した後に、これまでとは比べものにならないほど「伸び」た。 ――どうする。 黒メガネの頭は目まぐるしく回転していた。咄嗟の判断を今、迫られていた。 ――まだ、大丈夫か。いや、しかし。 瞬間、足下と波の距離を目算する。結果、まだ大丈夫ではないかという判断を下した。 だが、そのとき黒メガネの目は履いている靴を捉えていた。昨年の夏頃に購入し、以来苦楽を共にしてきた靴である。 それが理屈以上の行動を黒メガネに強制した。 ――こいつを濡らすことは出来ない。 直後、黒メガネは数歩退いていた。義に駆られた止むを得ない行動だった。正直なところは、何かと理屈をつけてみたものの、所詮チキンだったのだが。 ――しまった。 そう思ったときには既に遅い。 眼前には赤メガネが仁王立ちしている。負けたのだ、と黒メガネは悟った。 脳裏の赤メガネの高笑いが聞こえてくるようであった。後悔先に立たず。そう思えど、もはや黒メガネにはどうしようもない。 その直後、海岸には波にしこたま足を浸した赤メガネの叫び声が響き渡った。 「こないだ買ったばかりなのに!」 一緒に買いに行ったし知ってるよ、と黒メガネは妙に冷静な頭で思った。 ◇ 以上、先日の舞鶴レポートでした。 お騒がせした舞鶴の皆様、本当にすみませんでした。海の幸を堪能させていただきました。 それでは、ネタ切れなのになぜか最長のブログ更新。 結果は一応ドローのダイゴローでした。 長文を読んでくださり、ありがとうございました。 PR この記事にコメントする
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文芸サークル百宴らいたぁの若きエースにして人気者。
文芸活動だけでなく、映像作品・音楽作品に幅広く活動中。 好きなもの:黒いものと堀江由衣
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